breath

曇っているのに、月の灯りがとても強くて眩しい。あたしの地元は神戸でも山側だから、こうして公園に長く座っていると、二の腕を夜風がさして酷く寒い。それでもまだ帰る気がしない。
この町は優しすぎる。静かな静かな住宅街で、コンビニなんかもちろんありゃしない。自販機が必要最低限にあるのみ。駅へは二十分の道のりを歩かなきゃいけなくて、市バスと自家用車が住民の足。でも、九時を過ぎると道路はめっきりさびしくなってしまう。みんな馬鹿みたいにのんびりしていて、ある程度の財政的余裕がそうさせているのだけど、花に水をやったり犬を散歩させたり鳥に餌をやったりしている。絵に描いたままの平和な町。外に出てみないとわからなかったのだけど、ここの子供は比較的上品である。汚いことは知らないし純粋であることを恥じないし、かくいうあたしもそんな一人だった。
いつここを出ていくんだろう?そのタイミングに迷う。いつか必ず離れなければならないのだから、その時期を誤らないようにしたい。なんでここに生まれ育ったんだろう?本当の世界で自立してやっていけるのかな。
もうすぐ二十歳になります。英語のテストがその日にあるけど、午後からの予定は空けました。バイト先のみんながあたしの誕生日を知っているし、シフト入れてもおかしいからね。ただ、過ごすひとは決まっていません。
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