breath

なんでこの人は、自分のプライバシーに無頓着なんだろう。自分のパソコン、こうしていじくられるかもしれないのに、彼女ひとり部屋に置いて出掛けることができるなんて。あたしならロックかけて絶対に触らせないし、ヤバいものは削除してるよ。お陰で、ブックマークからとある女の先輩のブログを見つけてしまった。かつて部に居た美人のひとだ。あたしは彼女と親しくなかったけど、キレイだから好きだった。そして今なにをしているのか、ちらほら聞いたことはあったけど、嫌だなあ、こんなに詳しく知りたくなかった、苦しい。なんで読んでしまったんだ。別にSさんがこのひとを好きだとかそういうことではなくて、言ってしまえばこのひとはかなりのメンヘルさんで、でも頑張って就活をしていて、それだからあたしのことも、Sさんはそのまま受け止めてくれるのかと、そう思った。それで苦しいのだ。あれ、何言ってるのかわかんないや。
彼は、変な色の薬を部屋に放置しても、傷だらけの腕をむき出していても、なにも言わないでくれる。今日だって、寝ている彼の首を絞めた。けど正気に返って手を離すと、何事もなかったかのように抱きしめてくれた。ああ、このひとは、あたしが何者なのか、知っているんだな。そうだ、そうでなきゃ、そうしてくれないよ。元彼さんの理解が足りなかったとは言いたくない。今思うと、あたしは元彼さんにとって、散々泣いたりわめいたり突き放したりして、甘えたい時だけ甘えて、別れたらとっとと次に行ってしまったという、かなり酷い女だった。だからあたしの言えることはなにもない。ただ、Sさんがあまりにも大きすぎて、びっくりした、深くて、このひとはすごく深くて、びっくりした。はあ、あたしのこと、ちゃんと知ってたんだ。
依存することと頼ること、どこに境界があるんだろう?あたしは探っている。その、うまいこと、真ん中を。多分一生探り続ける。一度見つけても変わっていくから。少しくらいダメでいい。Sさんだって悪いとこばっかり、朝起きれないし授業は出ないしギャンブルするし酒飲みだしタバコは吸うし過去の女遊びがひどいし。せめていまやらなきゃならないことをしよう。それだけ。せめてそれだけ。ちゃんとご飯食べて、勉強やって、バイトして、卒論のこと考えよう。卒業後のことは、とりあえず、置いとこう。